ハーボニー偽薬問題 診療報酬改定を控え不味い空気感

 C型肝炎治療薬『ハーボニー配合錠』の偽造品が流通していた問題は、改めて薬局・薬剤師業界に深いツメ跡を残した。

 際立っていたのは一定規模を有する保険薬局チェーンが非正規ルートから医薬品を安易に購入し、疑うことなく調剤したことだ。

 その衝撃は大きく、「調剤報酬改定に多大な影響を与えることが想定される」(日薬・山本信夫会長)という異例の危機感が打ち出される事態に陥った。

 一方で当該偽造品そのものは既に市場からから駆逐された状況にあることから、日本保険薬局協会は近く「安全宣言」を発表する考えにあり、患者心理に配慮した施策を加速させる構えだ。

 問題は次第に収束に向かうとみられるが、前代未聞の偽薬流通・調剤という事案は火種としてくすぶり続けそうな様相を呈している。

 

厚労省「全体で取組むべき」 日薬「薬剤師としての適格性」

 

 先ほど行われた医薬分業指導者協議会のなかで厚労省大臣官房審議官(医薬担当)の森和彦氏と日本薬剤師会の山本信夫会長が、ハーボニーの偽薬問題について言及したが、その内容には微妙な認識の違いを感じさせるものとなった。

 

 森審議官は薬局で薬剤師が調剤した医薬品が偽物であり、患者の手元で判明した状況を「深刻な問題」との認識を述べたうえで、諸外国で見られる偽薬が日本で流通していないのは、医薬品供給体制が整っていることによるものであることが過去の話であるとして、「偽薬を流通させてしまったことによる信頼の失墜は免れない」との認識を打ち出した。

 初めて偽薬が流通したことで第二、第三の偽薬が市場に向けられてくる可能性も触れながら「薬剤師全体でこの問題に全力で立ち向かっていかなければならない」と呼び掛け、ひとつの薬局だけの問題ではなく、全体として取組むことの重要性を強調した。

 同審議官は医薬分業指導者協議会が昭和50年代の分業黎明期にスタートしたことを振り返る一方、全国平均で70%に到達した現状を鑑み、「数値の問題は関心事ではなくなっている。これからは薬局で薬剤師がどのような仕事をするか。こちらにシフトしていくべきではないか」と指摘し、会議の名称も関係者で協議するなどで「かかりつけ薬剤師をどのように進めていくかを協議する場としてもいいのではないか」と述べるなど、量から質への転換を示唆した格好だ。

 

 一方、山本信夫会長は終始怒りを前面に出したコメントとなった。そもそも同会長の登壇は会合の閉会挨拶として設定されていたものの、今回の事案を踏まえて急きょ前倒したものだ。

 

 偽薬問題が起こったことは大変残念な事態であるとしたうえで、「正規ルートでもなく、外箱も無く、さらに添付文書も有していないボトルだけの製品を買ったという行為は、『薬剤師としてこれは正しいことなのかどうか』という認識に欠けている」と厳しく言及。

 非正規ルートで医薬品を購入する背景が価格だけであり、安易なモノに手を出したことに対して、「薬剤師は国民・患者の命を何だと思っていると言われても仕方ない。僅かな金額差に目がくらみ、あまつさえ調剤してしまった薬剤師は、国民・患者にどのような責任が取れるのか。薬剤師としての適格性にも劣るのではないか」と語るなど、職能の根幹に関わる問題との認識を示した。


 薬剤師という国内で唯一の専門家が、学んだ知識と会得した技術を全く発揮せずに調剤したことにも不信感を示し、「これまで築き上げてきた薬剤師への信頼感を一気に貶めた。安全な医薬品を供給することすらできない薬剤師に、患者の安心・安全を守ることができる訳がない」と言葉を続けた。落ちてしまった信頼感を回復するのは容易ではなく、「何が健康サポート薬局だ、何が医薬分業だ、何が薬剤師だ」とまくし立て、次回調剤報酬改定にも「多大な影響が出ることが想定される。医薬分業を進めたいのは薬剤師であったが、制度を壊すのも薬剤師であると肝に銘じて欲しい」などと話し、今回の偽薬を調剤した薬局が会員店舗であったことも踏まえ事態の認識と倫理教育を徹底することの重要性を強調した。

 医薬分業指導者協議会の名称については「このような問題が起こるなかで改めてその役割がある」と語り、会合の継続を主張した。

 

NPhA「患者の不安解消へ」取組み強化

 

 調剤薬局チェーンが参集する日本保険薬局協会(NPhA)も全容が判明しつつあることを受けコメントを発表。

 中村勝会長(クオール代表取締役会長)は、売上高が160億円にも達する規模を有する関西メディコが非正規ルートを使用していたことに注目し、「大変驚いた。さらに外箱や添付文書のない医薬品を買うという行為も信じられない」との感想を述べ、医薬分業の意味が問われるとの指摘に対しても「ごもっとも」と言葉を続けた。


 その一方で「大半というかほとんどの薬局で薬剤師は真面目に業務をしている」と訴え、厚労省と詳細を調整したのちにも「ハーボニー配合錠に対する安全宣言を提示したい」と考えていることを明らかにした。

 

 安全宣言の具体的な内容については明示しなかったものの、服用している患者とその家族の方が不安にならないような文言を想定していると言い、「服薬することについて薬局に問い合わせがあったとの事例も聞いている」と語った。

 

薬局新聞 2017年2月22日付