薬局・薬剤師に変革求める“ビジョン”明確に

 厚生労働省は「『患者のための薬局ビジョン』~『門前』から『かかりつけ』、『そして地域』へ」を策定し、これを公表した。薬歴未記載問題や無資格調剤という不祥事を受けてスタートした医薬分業と薬局・薬剤師に対する社会的な問いかけは、公開ディスカッションや大臣の「病院の前の景色を変える」発言、「健康情報拠点薬局のあり方検討会」などを経て、国から国民に提示された今回の『ビジョン』で、ひとつの区切りを迎えた格好だ。

 しかしながら、今回示されたビジョンは患者のためではなく、薬局・薬剤師に変革を求める国の意思が明示されたものと言え、記載された絵姿に現場を変えていく国の方針が強く感じられる。

2025年までに「すべての薬局をかかりつけ薬局へ」


 覚悟をもって真摯に取り組む。日本薬剤師会は「患者のための薬局ビジョン=以下ビジョン」の公表を受けてこのようなコメントを発表した。ビジョン全体の評価としては「日薬が目指してきた薬局・薬剤師像が示されている」とし、衷心よりの感謝を表明している。


 日薬は高い評価を下すものの、現場への課題は大きい。ビジョンは先ほど取りまとめられた『健康サポート薬局の報告書』と基本的には同じ内容になっているものの、細部の設定が固められたものとなっている。


 かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき三つの機能としては健康サポート薬局の報告書で示された「服薬情報の一元的・継続的把握」「24時間対応・在宅対応」「医療機関等との連携」が改めて強調されているほか、患者等のニーズに応じて充実・強化すべき2つの機能として(1)「健康サポート機能」(2)「高度薬学管理機能」を設定。

 (1)は健康サポート薬局の報告書でも触れられている「医療機関など関係機関とあらかじめ連携体制を構築」「研修を修了した薬剤師が常駐し、土日も一定時間開局など」「要指導医薬品等を適切に選択できるような供給機能」などを求めている。

 その一方(2)「高度薬学管理機能」は健康サポート薬局において一度も検討されたことはないまま報告書に記載された事項だ。ビジョンによると「学会等が提供する専門薬剤師の認定等を受けた高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤師を配置」「専門医療機関との間で、新たな治療薬や個別症例等に関する勉強会・研修会を共同で開催」「がんやHIV、難病のような疾患を有する患者に対して、あらかじめ医療機関との間で対応要領を定め、以下のような高度な薬学的管理ニーズへの対応を行う」として、抗がん剤は「発熱等の副作用が生じた際に、担当医への受診などの対応について助言」、抗HIV薬服用患者の場合には「他の併用薬等との情報をもとに、適切な抗HIV療法を選択できるよう支援」することを条件として定めた。


 高度薬学管理機能については、先日の都薬連盟セミナーで講演した漆畑稔・日薬相談役は「仮に抗がん剤等の処方提案が求められるのであれば、具体的な診療情報がなければ事実上、不可能だと思う」と言及しており、今後の運用詳細については更なる議論が求められる事項となっている。


 ビジョンは「薬局“再編”の全体像」という文言の下、現状の門前を中心とした立地から、機能を求めることを打ち出している。

 2025年までの約10年間で全国にある面分業、診療所門前、中小病院門前、大病院門前の57,000軒の薬局について「すべての薬局をかかりつけ薬局へ」と定めている。

 さらに団塊の世代が要介護状態になる可能性が高い85歳以上に到達する20年後の2035年には、診療所門前、中小病院門前、大病院門前の状態に対して「建替え時期等を契機に立地を地域へ移行」することを求める。


 薬剤師業務に関しても「PDCAサイクルの実施」を掲げており、医薬分業の質を評価できる指標を「今後具体的に検討」し、毎年の政策評価(業績評価)でモニタリングを実施することを明らかにした。

 具体的には「かかりつけ薬剤師・薬局の数」「疑義照会の実施率、件数」「24時間対応、在宅対応の実施数、件数」「残薬解消の実施率、件数」「後発医薬品の使用割合への影響」を調べることを明記。

 診療報酬については中医協で効果の検証を行っており、この仕組みを引き続き活用することが記載されていることから、薬局での様々な実績件数がそのまま報酬に跳ね返る点数体系の構築を窺わせる内容となっている。


 またビジョン実現のために「実態調査・ロードマップ検討事業」を来年度に行うことも付け加えており、「門前からかかりつけへの実現となるための具体的な施策を検討するうえで参考となるよう薬局の実態を調査し、ビジョン実現の留意点などを検討」することを予定している。


薬局新聞 2015年11月4日付