【店舗レポート】キリン堂心斎橋OPA店(大阪市中央区)

 大阪・心斎橋で4月4日に開業したH.I.S.による「OSAKA TOURIST INFORMATION CENTER」(OTIC)に参画し、キリン堂が中国人観光客を中心とする訪日外国人旅行=インバウンド向け店舗を手がけた。

 同社では初の本格的なインバウンド対応となるほか、商業ビル内の訪日旅客専門フロアという完全に外国人観光客に特化した特殊な立地での展開としても注目度は高い。

 高齢社会に伴う構造変化や増税で国内市場が冷え込むなか、主要ドラッグストア(DgS)にとって品質の高い日本の商品に対する強烈なインバウンド需要は数少ない成長の牽引材料となっているが、単に“爆買い”と表現される大量購買に留まらないノウハウ確立も見据えられているようだ。


訪日旅客専門フロア内にインバウンド特化型店舗出店


 OTICは心斎橋OPA本館8階1フロア300坪強に、H.I.S.の旅客カウンター、観光案内所とDgSや家電といった特にアジア系観光客に人気の売場を集約したもので、訪日旅客専門のサービス拠点としては日本最大級との鳴り物入りでオープンされた。

 このうちキリン堂は物販で最も大きい約70坪を占め、日本の薬や化粧品に寄せられる人気・期待と同社の意気込みを窺わせている。


 同じ心斎橋で先行して際立った実績をあげるマツモトキヨシやコクミンを筆頭に、今やインバウンド対応店舗が全店でトップクラスの売上げを誇る状況にあるのは周知のとおり。

 キリン堂は都市部立地の店舗が少ないために出遅れていたが、それでもホテルや駅の近接店舗で中国人観光客をはじめとする実績が急速に目立ってきたとし、「大阪本社ながらミナミ中心部になかったこともあり、これを機に本格的なインバウンド需要の取り込みと外国人対応のノウハウを重ねる」(IR・広報室)との意欲を示す。

 訪日外国人といっても基本は購買意欲が強い中国・台湾人の観光客で、接遇・販促から売場作りまで中国・台湾人向けの体制を整えるとともに、免税店許可および免税処理に対応した設備を導入した。

 店長ら3人の社員を除く16人のバイトスタッフには全て日本語と中国語、英語を話せる中国人を雇用し、開業直後で認知やツアー客の誘導が軌道に乗っていない滑り出しでは、これら中国人スタッフがビル周辺の路上で声かけを行いながら地道に実績と運営ノウハウを積む。


 そもそも一般客を前提としない訪日旅客用スペースなので、繁華街や観光地でのインバウンド対応以上に「如何に中国人観光客の売れ筋商品を揃えて売り切るか」を徹底しているのが特長だ。

 品揃えは薬粧分野の有名ナショナルブランドに絞り込み、入口付近では資生堂や花王の代表的な化粧品類、またアリナミン、イブ、バファリン、太田胃散といった定番OTC薬を薬効別というよりもブランドごとに大量に山積み陳列。昨秋から免税対象に加えられたことも背景に、これらOTC薬も“日本土産”ときっぱり割り切った姿勢が際立つ。


アジア市場戦略での相乗効果も狙いに

 モノによっては納品された状態のまま、つまり10~20個単位の流通包装形態で売場に並べる様子は独特だが、確かに観察するとスマホ片手に売場を物色し、目当ての商品を見つけるや瞬く間にカゴを満載にする買い方の勢いは凄まじい。

 「もちろん通常の相談応需などには登録販売者の社員が対応するが、だいたい買いたい商品は決まっている。今後ツアーの団体客が頻繁に訪れるようになると、少しでも接客や会計に手間取れば行列・クレームに繋がるため、まずは数をこなす運営が課題になると考えている」。

大量陳列の商品を勢いよくカゴに入れる様子は圧巻
大量陳列の商品を勢いよくカゴに入れる様子は圧巻

 一方、キリン堂は3年前に中国でのDgS展開に乗り出すとともに(現2店舗)、昨年からは中国大手オンラインモール・アリババ系の通販サイトに出店しており、現地ニーズの吸い上げや商品政策をインバウンド対応に連動させながら事業の相乗効果を高める狙いを強調。

 「まだ中国での店舗展開は実験段階ながら、国内市場が縮小していくのは間違いなく、健康や美容は万国共通としてDgSの役割を広げたい」と、アジア展開を見据えた取組みの一環に説明する。

 並行して特殊な立地とコンセプトながら、同店で得た売場作りや商品政策、販促・接客のバイリンガル化といった試みはチェーン各店に取り入れていく構えだ。

 「調剤などでもたまたま英語を話せる者が居て対応すると、口コミで外国人の患者が増える。より外国人の方が身近になる社会情勢に組織的な対応を図る必要もある」。

 訪日外国人観光客が昨年1300万人を超え、今後さらに東京オリンピックに向けて一層の盛り上がりが期待されるインバウンド対応は、物販に限らず店舗の機能やサービスの国際化も加速させつつある。


薬局新聞 2015年4月29日付