高まるスポーツファーマシストへの期待

 家庭常備薬の約半分がドーピング検査に引っかかるとの調査もある中で、スポーツファーマシストが小中学校と協力して行えることは多い。

 東京オリンピック・パラリンピックを5年後に控え、東京都薬剤師会はスポーツファーマシストを対象にしたアンチ・ドーピング講習会を開催した。

 組織的なドーピング投与が行われている諸外国と比較して日本のアスリートはドーピングに対してクリーンな状況にあるものの、先日の柔道国際大会の事例のように意図としない“うっかりドーピング”に晒されることは一定頻度が発生していることも事実だ。

 講習会では町の薬局における取組事例が紹介されたほか、都薬ワーキンググループの活動について講義するなど、スポーツファーマシストの役割について認識を高めた。


東京五輪に向けて役割と重要性を再確認 選手へのサポートで薬剤師の存在感発揮

 スポーツファーマシスト(SP)の設立経緯を簡単に振り返ると、2003年開催の静岡県を中心としたわかふじ国体において参加選手にドーピング検査を実施したことに遡る。

 トップアスリートとは違い、多くの一般生活者が競技者として参加する国体においては、町の薬局・ドラッグストアで薬を購入することが考えられるため、静岡県薬剤師会が「薬局におけるアンチ・ドーピングガイドブック」を作成したことをはじめ、競技者・コーチなどからの問い合わせに対応するホットラインの設置などをきっかけに、2004年に日本薬剤師会と日本アンチ・ドーピング機構が協力するかたちで世界初の「スポーツファーマシスト」が設立された。

 その後、国体におけるドーピング使用者は12年間にわたり陽性者はゼロとなっており、一定の貢献が推測される状況を迎えている。


 その一方、SP取得後における活躍場面の少なさや、社会的な知名度の低さもあり、アスリートに貢献したい薬剤師側の理念と実際の活動にギャップがあるのは確か。

 講習会ではこうした実態を踏まえ、5年後に控える東京オリンピック・パラリンピックの開催も背景として、SP全体のモチベーションアップも踏まえた講習会となった。

秋葉薬局・高松氏が薬局での事例を紹介
秋葉薬局・高松氏が薬局での事例を紹介

 事例報告を行った秋葉薬局(東京・中央区)の薬剤師・高松謙悟氏は、店頭で遭遇した事例とそれを踏まえた反省点などを述べた。

 高松氏が遭遇したのはイタリア人と日本人のハーフの女子新体操選手で、腰痛に悩んでいるが、日本で流通しているロキソニンは効果が弱く、リリカでは服用後の眠気から服用したくないと主張。

 親族がイタリアで購入したという薬を服用していいのかという相談を受けた。

 調べてみると欧米の一部では販売中止となっているほか、日本では動物用医薬品として流通していた医薬品であると判明。

 作用機序などが不透明なため服用中止を指導したという。

 高松氏は一連のSP活動で「電話のみで対応したのは反省点で、履歴が残るメールやファックスで対応すべきだった」と述べたほか、「相談に対するフォローがなく、丁寧なコミュニケーション次第では“かかりつけSP”になれたのではないかと感じた」などと振り返った。

 SP活動の注意点として「電話相談には折り返し電話」「回答に自信がない場合は薬剤師会などのホットラインを活用」「選手生命を預かっている認識を持ち、スピードよりも正確性を求める」ことなどをあげた。

若年層へのアピール強化で認知度向上も


 加えて高松氏は地域における学校薬剤師活動でSPをアピールすることの重要性を強調し、認定取得後の活躍フィールドについては、小学校における薬物乱用防止教室や中学・高校でのくすり教育などを例示した。また現状はドーピングを防止する観点での活動となっているが、将来的にはドーピング違反を起こしてしまった選手へのサポートも必要ではないかなどと提言した。


 講習会ではこのほかに東京都薬剤師会の高橋正夫常務理事が、東京オリンピック・パラリンピックに向けた都薬の活動方針を強調。

 トップアスリートへの直接的な関与をイメージするだけでなく、5年後のアスリート環境に貢献する心構えが必要と指摘し、「オリンピックを目指しているジュニア世代の選手のアンチ・ドーピング活動は所属するチームや協会からのサポートだけとなっている。うっかりドーピングはどの選手にも発生する可能性を考慮すると、SPの存在を若年層へアピールすればコーチやスタッフの方にも認知度が広がる」と述べ、職能としては確立されたものではないが、地域に広く打ち出していく姿勢が重要とした。

日本アンチ・ドーピング機構の浅川伸専務理事も講演し公平公正な競争の重要性などを述べた
日本アンチ・ドーピング機構の浅川伸専務理事も講演し公平公正な競争の重要性などを述べた

東京オリンピック・パラリンピックが決定してもう2年が経過。5年後の東京大会までの時間は短く、SPをどのように地域にアピールすればいいのか模索中ではあるが、この状況は奇しくも現状における医薬分業と薬剤師の役割に似たような印象を抱かせるのは偶然ではないだろう。「好きこそ物の上手なれ」との言葉にあるように、多くの認定取得者はスポーツが好きという共通項があるはずだ。自らそのフィールドで活躍するイメージで知名度を高める構えを見せたいところだ。


薬局新聞 2015年3月25日付