波紋広がる薬歴未記載・不正請求疑惑問題

 くすりの福太郎で不適切な薬剤服用歴の管理による調剤報酬の不正請求が行われていたとする報道を受け、主要ドラッグストア(DgS)や調剤薬局をはじめ関係各方面でその対応に追われている。

 同社親会社のツルハホールディングスは3月末をめどに原因究明と再発防止策をまとめる方針を示しているが、両社を会員とする日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)も事態を重くみて即座に対策本部を設置。

 業界をあげた取組みに乗り出す一方で、日本薬剤師会は職能団体として強い憤りを表明するとともに調剤報酬改定議論を控えたタイミングの悪さを強調しており、規制改革会議が3月12日に行う医薬分業に関する公開ディスカッションへの影響を筆頭に、この問題を起点にして意図的な議論誘導が行われる情勢に警戒感を強める状況にある。

日本薬剤師会「信頼性を貶める行為」と痛烈に非難


 今回の報道による問題発覚を受けてJACDSは、12日付で「国民や患者様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」と陳謝し、当該企業への実態把握と厳格な指導に着手するとともに、調剤業務不適切問題対策本部を設置して全会員企業にコンプライアンスの徹底を図る文書を公表した。

 対策本部では報道された両社から報告と今後の対応・防止策を提出させるとともに、関係行政および当局の調査などに積極的に協力する方針で、適切な調剤業務の徹底に向けた専門家や有識者による検討会の設置やマニュアルの作成、会員企業からの相談応需体制の確立に加え、「薬歴管理の徹底のために電子薬歴普及に業界をあげて取組む」といった考えも示している。


 一方、日本薬剤師会は今回の不適切事例について「報道が事実であれば、薬剤師全体並びに保険調剤の信頼性を貶める行為」との談話を発表するなど、DgSという一部企業における不祥事として若干距離を置くスタンスで遺憾の意を表明している。

 日薬の山本信夫会長は「あくまでも報道ベースであり、当会としては事実関係を把握していない」と前置きしたうえで、報道が事実であれば「薬剤師全体並びに保険調剤の信頼性を貶めるもの」とし、あってはならない行為であると言及。

 不適切事例をうけて都道府県薬剤師会に対しては「改めて会員への指導の徹底」を求めた。

 厚労省保険局及び医薬食品局に対しても、事実関係の調査と事実であった場合の厳正な対応を求める考えを強調している。

 また、山本会長は兼任する東京都薬剤師会の定例記者会見でも同問題について触れ、「不愉快極まりない事例」と一層強い口調で考えを述べたものの、都薬会員として「くすりの福太郎」が4店舗存在していたことについては「残念」とコメントした。


 日本保険薬局協会(NPhA)の中村勝会長も日薬と同様に遺憾の意を発表しており、記者会見において「国民皆保険制度に携わる一員としての認識が不足しているのではないか」と指摘。

 保険医療は患者との信頼・信用・良識をベースに提供されることが大前提であるとの考えを持つことが重要と述べた。

 中村会長は当該企業や行政の対応に注目している状態であるとしたうえで、「NPhAとしては、情報を共有して同じようなことがないことを各企業で注意していくことを確認した。ただ、現場の薬局・薬剤師という医療の担い手としては、大変残念な気持ちである」と語るとともに、一部店舗の実態として「保険医療システムの一員として認識が足りないと感じるところがある」とし、薬局は医療提供施設であることの更なる自覚が求められるとした。
 加えて「そもそも薬歴とは、患者に医療を提供したことの記録であり、薬剤師が実施したことに対する証拠でもある」との持論を展開しつつ、「この2つの基本的な考え方からすれば、今回の事例は問題外だ。医薬品提供について、考えもなく薬を渡していただけの行為」と厳しく非難するなど、あってはならない事態であると重ねて再発防止を求めた。


厳しい声とともに広がる制度論をめぐる懸念

 

 不適切を疑わせる状況自体は決して許されないとして、遠因にDgSなどの現場での薬剤師不足をあげる声も少なくないが、当然ながら当事者方面以外からは「理由にならない」との手厳しい声が寄せられている。

 

 日薬の山本会長は「現時点で(薬剤師が)足りないからルールを破るというのは話が違う」とし、不適切行為には関係のない問題と強調。

 NPhAの中村会長も「薬剤師が足りないから、こうした事態に繋がったというのであれば、薬剤師が足りるまで薬局を開かないことが先であり、そのようなことは一切理由にならない。まさに本末転倒」と断罪する一方、薬剤師の需要と供給のバランスについては「課題がある」とし、いわゆる新卒薬剤師がいなくなった2010~11年の“空白の2年間”は現在まで影響していることも示唆した。

 

 加えて日薬・NPhAとも、今回の問題が保険薬局における薬剤師業務や調剤報酬に関わる議論、また医薬分業全体に悪影響を及ぼすきっかけとなりかねないことに警戒感を強めている。

 

 特に直近では3月に予定される規制改革会議の公開ディスカッションに関し、「突飛な事例で全体を議論するのは困る」(山本会長)、「不適切事例はあくまでも一部の行った行為であり、全体の多くが正しく行っていることを考えれば、議論に影響を与えるようなことがないよう願っている」(中村会長)など、一部の不祥事が意図的に制度論に転換されることのないよう、客観的な議論が行われる展開を求める立場が強調されるところとなっている。

 

薬局新聞 2015年2月25日付