調剤報酬改定の隠れたメッセージ

(文:パスカル薬局 横井正之)

 さて、いよいよ2014年度調剤報酬が始動する。今回の改定は非常に厳しいという声が各方面から聞かれる。確かに在宅医療に舵を切るなど、ドラスチックな変化であることは間違いない。

 だが、医科歯科との配分比が0.3に保たれるなど、昨年来の非常に激しいバッシングの割には踏みとどまったという感も強い。

 伝えられる中医協委員らの指摘について、それは首都圏の話だとか、大手調剤チェーンの話だとか、半ば他人事のように考えていた薬剤師にとっては、寝耳に水という印象を持ったかもしれない。

 

 しかし、今後は大量に水が入ってくるに違いなく、そろそろ目を覚ました方がいい時期だろう。

 今回の調剤報酬改定は、基本料もしくはそれに近いところに改定が盛り込まれたため、これまで通りの仕事ぶりであれば、収支が悪化する薬局が多く出てくることはほぼ間違いない。

 また、ジェネリック医薬品や在宅の実績要件については、処方を出す側の問題もあることから戸惑う声が大きい。

 

 改定内容に不満が大きいことは十分承知した上で、それは他に譲りたい。

 ここではこの環境にどう対応するべきか、また厚生労働省や中医協の隠れたメッセージは何だろうか、という視点で考えてみたい。

 改定の柱が表向きには、ジェネリック医薬品の使用促進と在宅医療であることは異存の無いところだろう。

 しかし、それ以外にこれまでの経過や結果を見ると、その背景には5つほどの重要なメッセージがあると私は思うのだ。

 

2014年度調剤報酬改定について薬剤師に突き付けられた5つの課題

 

 第一のキーワードは、『一人前』である。

 調剤も医科、歯科との並びで評価されるようになってきたということである。基準調剤加算の要件が、今回厳しくなっているが、これは医科などと比べてそもそも認定基準が甘いという指摘から来ているものである。

 これまで「自分たちは頑張っているのだから点数がついて当然」と思っている薬剤師が多い中で、そういう理屈では通らなくなってきたということである。

 世間を見渡せば、プロなら頑張っているのは当たり前であり、かつ頑張っていても非正規雇用という時代である。

 自己満足ではなく「他者と比べてどの程度頑張っているのか」「本当に役立っているか」「どのくらい代替の効かない仕事をしているか」などが、一人前になった薬剤師にも問われる時代になったと言えるだろう。

 

 第二のキーワードは、『エビデンス』である。

 調剤報酬改定は、エビデンスを基に議論がされている。

 かつて名城大学の大津史子先生が指摘されていた様に、薬局薬剤師の論文数は、他の医療職に比べて極端に少ない。

 改定の経過を聞くと、かつての様な単なる薬剤師の主張だけでは通らなくなってきているのは明らかである。

 主張するには、まず調査に耐えるだけの現場の実態が無くてはならない。

 その上で、介護福祉士や理学療法士同様に、薬局薬剤師も自らがきちんとした学会を作るなど、エビデンス構築のための対策を進めることも急務だろう。

 今後も「実績・実証無しは点数なし」の傾向は、強くなるに違いない。

 

 第三は『発信力』である。

 これは一言でいうと、「自らアプローチせよ」ということである。

 薬の専門家なら後発医薬品へすべて変更不可の処方を書く医師を説得することや、本当に役に立つのなら在宅の処方箋が出るように医師・ケアマネ等に働きかけよ、ということである。

 これは既にビジネスの世界では、グローバル化とともに標準となっている。

 

世界水準の質の高い人材の育成を

 

 第四は、実はこれが一番大切なことであるが、『患者と会話せよ』である。

 「ジェネリックの説明が全くない」「お薬手帳のシールが入っているだけ」など、薬剤師バッシングの本質は、この一言に尽きる。

 これらは物理調剤に固執して患者と話をしなかった結果と言え、このままなら在宅に行っても薬を運んでいるだけという批判を浴びるだけだろう。

 今回、調剤手順にも大幅な変更があったが、これは「薬だけではなく患者とも向き合え」というメッセージでもある。

 つまり、ここを解消しない限り、今後もバッシングは続くということである。

 

 最後は『質の高い人材育成』である。

 薬局薬剤師の中には、どこかの学会に参加・発表した、ケーブルテレビに出演した、学校で講演をしたという程度で満足していることが多い。

 それも実行するのが精一杯で、内容は二の次である。

 彼らの頭には常に「薬局薬剤師にしては…」という冠がついているように見えて仕方ない。

 メーカーの技術者で、その程度で満足する者などまずいない。

 プロスポーツの選手を見ても、表彰台に上がるために厳しい練習にも耐え、向上心も強い。

 

 わが国の薬局薬剤師の中に、Pharm.Dを凌ぐ世界レベルの薬剤師になろうとするくらいプロ意識のある者が、一体何人いるだろうか。

 多くは、既得権という金物屋で購入したメダルで満足しているのではないだろうか。

 今後、我々に必要な事は、みんなで落ちていくことではなく、世界標準の質の高い層を1%でも養成することだろう。

 少なくとも今回の診療報酬改定で、病院薬剤師と薬局薬剤師の明暗を分けたものがあるとすると、それはこの1点に尽きる。

 

薬局新聞 2014年4月9日付

◎横井正之 … 薬剤師。京都大学薬学部卒。滋賀県草津市でパスカル薬局を開局。ジェネリック医薬品約400品目近くを含む2500品目の備蓄を揃えて完全な面分業対応型薬局を運営する一方、滋賀県薬剤師会副会長、立命館大学非常勤講師も務め、啓蒙活動や学会発表でも精力的に活躍中。