波紋広がる「ヨヤクスリ」

ヨヤクスリ
ケンコーコム・後藤社長は「処方せん調剤・薬局ビジネスに小さな革命を起こす」と力説

 ケンコーコムが5日にスタートした調剤に絡む新サービス『ヨヤクスリ』が波紋を呼んでいる。

 患者が自分の処方せんをパソコンやスマホに画像データとして取り込み、都合の良い薬局を選んで予めFAX送信することで患者側、薬局側ともに円滑な調剤を促すもので、基本的には無償ながら唐突なサービス開始に多くの現場で戸惑いの声があがっており、薬局情報のリスト化や患者によるレビュー機能、また個人情報の取扱いを焦点に成り行きが注目されている。

 

面分業促進や医療サービス向上の事業展開強調

 

 サービス開始に際して記者会見したケンコーコムの後藤玄利代表は、急速なICT進展やスマホ利用者の急増といった世情に対し、医療方面では技術革新の恩恵がほとんど享受されていないと指摘しながら、「ヨヤクスリはICTの活用で患者・薬局双方にとって調剤をより便利なものにしていくサービス。今は小さな革新として、ゆくゆくは調剤を大きく変えていくものと考えている」との自信を示した。

 

 同サービスは医療機関情報を扱うウエルネスのデータベースをもとに、全国52,000軒の薬局情報を地図付きで掲載し、このうち1万数千軒を処方せんFAX送信可能薬局として紹介する。

 現時点は東京・神奈川に限定した運用だが、5月頃をめどに全国区へと広げる計画で、患者が処方せんを持ち込む薬局の選択肢に働きかける点では「面での幅広い処方せん応需を後押しする」(ヨヤクスリ担当者)と強調。近く薬局が独自のサービスや魅力をPRする機能を盛り込み、患者への認知度アップに向けた広告展開を当面の主事業に位置付けている。

 

 また、患者視点では自分に適した薬局選びや待ち時間短縮などの利便性に加え、今後ケンコーコムのサイトなどで使えるポイント付与(処方せんFAX1送信あたり10円相当)を行うことでユーザー拡大を図るほか、患者が実際に利用した薬局について「説明のわかりやすさ」「親切さ」などをクチコミするレビュー機能を取り入れているのがポイントだ。

 

 ネットのクチコミに関しては飲食店の紹介・評価サイトなどで信用問題が発生しているが、同社では自社通販サイトのノウハウに基づいた不正防止・監視の運営ポリシーやガイドラインの徹底を説明。

 そもそも調剤は患者にとって違いがわかりにくい状態にあるとし、「薬局ごとの特長を新たな視点で比較した情報を提供することにより、薬局同士が質を競い合うことは分業本来の趣旨に適うもので、かかりつけ薬局を目指して頑張る薬局の支援に繋がる」と主張している。

 

現場の混乱も 潜在的なニーズに手応え

 

 一方、リスト掲載する薬局に対して事前に承諾を得ず、「サービス開始当日にFAXで通知した」だけだったことでは、薬剤師会などの業界団体が困惑や不快感を表明する事態となっている。

 現場に混乱を生じさせたことについては同社も「案内が直前になってしまった」と認めており、100社・数100薬局程度のリスト削除依頼に対応したという。

 

 滑り出し1週間の具体的な苦情として、患者が撮影してFAXされた処方せん画像が判別しにくいといった品質問題や、調剤用ではないFAX番号への送信、周知が行き届いていないことによる対応の遅れなどが寄せられている模様で、「処方せんが判別しにくい事例を受けてはシステム見直し、品質向上を進めている。早急な周知を目指して目下、主要企業や関連団体への説明を優先して順次進めている」と、まずはユーザー拡大よりも薬局方面における理解を優先している。

 

 また、ヨヤクスリのサイト上では運営で得られた情報の二次利用にも言及しており、将来的な事業展開に想定される処方せん情報の営利利用について個人情報上の問題を指摘する声もある。

 この点について後藤代表は個人情報を一切排除した形を想定するとともに、あくまで医療サービス向上に役立つビジネスモデルを目指すことを強調。

 

 会見した2月初旬までに目立った告知をしていないにも関わらず300名以上が登録し、100件単位でFAX送信が行われた状況から潜在的なニーズは高いとの見方を寄せ、「100万件単位でこうしたニーズがあっても全く不思議はない」と今後の発展に意欲を示した。

 

薬局新聞 2014年2月26日付