2014年

2月

24日

嚥下フィジカルアセスメント認定薬剤師展開 ウエルシア関東

 主に在宅医療に従事する薬剤師が患者の嚥下状態を確認して服薬支援に繋げる『嚥下フィジカルアセスメント(PA)』が本格的に動き出しそうだ。

 ウエルシア関東調剤介護本部に勤務する歯科医・大西孝宣氏が自社薬剤師を対象に昨年から進めてきた取り組みで、先ごろ1年間で一定スキルを身に付けた6人の“嚥下PA認定薬剤師”が誕生。

 これを足がかりに薬剤師業務の質的向上と意識高揚を図るとともに、今春にはインストラクターを輩出しながら社外にも認定を広げる準学会的な法人を立ち上げる計画だ。

 

初の認定者輩出で嚥下PA展開加速 今春には準学会的認定法人を設立

大西孝宣氏
大西孝宣氏

 

 大西氏が進める薬剤師による嚥下PAとは、処方薬の確実な服用を促す意味合いで患者の頸部聴診を実施し、嚥下音から潜在的な誤嚥の発見や状態に応じた服薬指導、剤型変更などの提案を図ってチーム医療での存在感を増すことを目的とする。

 もともと嚥下状態の確認は耳鼻咽喉科や歯科が専門領域で、特に歯科医師では大西氏曰く「点数の算定項目すらない当たり前のスキル」など、“DgS勤務歯科医師”という希有な存在感に比例した独自性の高い試みと言える。

 

 昨年から着手した社内認定プログラムは、基礎知識の座学および頸部聴診法、反復唾液嚥下テストなどの実地研修を受講するとともに、嚥下音の聞き分けに最低限必要と大西氏が解説する「一定期間内延べ100人以上の聴診」をこなした後、レポート提出・ヒアリングを経て認定を行う。ウエルシア関東では大小あわせて現在200施設余りで居宅訪問服薬指導業務を実施しており、都内2施設でチーム医療の協力を得て薬剤師による嚥下PAを展開。

 施設を担当する12薬局・100人の中から最先発の6人が初認定に至った形だ。

 「日常の薬剤師業務に追われるなか、なかなか嚥下PA認定活動に参加する薬剤師は限られているが、取り組みに手応えを感じる意識の高い認定者が出たことで一気に広まらせたい」。

 今後、学会発表などの活発化を見越して社内に関連委員会を立ち上げるなど、認定薬剤師の輩出に漕ぎ着けた大西氏の鼻息は荒い。

 

将来的には公的なフィー化も視野に

 

 聞き分けスキルを備えた薬剤師が嚥下音の確認に取り組むことにより、在宅医療の現場でどのような成果があげられるのか。

 認定と並行して昨年、大西氏らが医療薬学会でポスター発表したデータでは、要介護度2~5の高齢者204人中6割に誤嚥音を認識し、このうちカルテに嚥下障害などの記載があったのは3割弱と、7割近い高齢者に潜在的障害の疑いが確認された。

 「嚥下障害は進行性病変でもあるので、決してドクターが見逃しているというわけではなく“かくれ誤嚥”の発見になる」と、大西氏は薬剤師によるPA参画の可能性を指摘する。

 

 また、食事時に誤嚥を確認した認知症患者に対する検証で、ほとんどがOD錠の偽薬を正常に服用できたことを確認した。

 これは「剤型変更の有効性を実証する根拠のひとつ」だ。

 

 「数少ない例外も、認知症の方には固形物を口中に入れるだけでも拒否反応を示すケースもあり、また自分の唾液でさえ誤嚥してしまうような場合は、さらに貼り薬や注射剤などの経路変更を提案すべきことがわかった」。

 薬剤師によるPAが各方面で進展しているが、大西氏は嚥下音の確認について「アセスメント自体が目的ではなく、患者の状態に合った調剤の遂行を前提とする内容から、バイタルサインチェックよりも現場で理解が得られやすいし、薬剤師にとっても必要性がわかりやすい」と解説する。

 

 実際、学会発表などを通じては複数の薬科大学から解説依頼や共同研究が持ちかけられているほか、活動の延長線上で今春、嚥下PA薬剤師認定制度の外部展開を目指して一般社団法人を立ち上げる計画も進めている。

 初の社内認定薬剤師が誕生したことで確実に次の展開が見えてきた。

 

 次年度は社内で50人の認定者を輩出する予定だ。

 「歯科医師を中心にスタートする一般社団では、彼らの受け皿としてインストラクター集団を抱えることで、企業や立場を超えて多くの薬剤師に嚥下PAスキルを発揮する状況を導き、ゆくゆくは嚥下困難者加算などで薬剤師が中心となるように厚労省に働きかけていきたい」と、大西氏は夢を膨らませている。

 

薬局新聞 2014年2月12日付