【薬局レポート】有馬センター薬局(神奈川県川崎市)

 神奈川県川崎市宮前区の『有馬センター薬局』は、店舗構造の細部まで患者目線を取り入れた薬局づくりに取組んでいる。

 患者のプライバシー保護の視点から薬局内における動線、人間の潜在的な意識に訴えかける床材の色分け、近隣住民層を考慮して子どもが足を運ぶことを嫌がらないさまざまな工夫など、代表取締役の伊藤啓氏がこれまで感じてきた率直な疑問に対して店舗で答えを模索している。

 また、川崎市と同市薬剤師会、ソニーが実施している電子お薬手帳の実証実験にも参加し、その役割とメリット、デメリットについても利用者の生の声に触れながら今後を検討しているという。

 地域における薬局の将来を考えたとき、薬剤師が職能を発揮できる環境はどのようなものか。

 同薬局から示唆される部分は少なくないはずだ。

 

細部にこだわった患者目線の店舗構造でコミュニケーションも柔軟に

伊藤啓代表(右から3人目)と薬剤師・スタッフの皆さん
伊藤啓代表(右から3人目)と薬剤師・スタッフの皆さん

 

 今回取材した『有馬センター薬局』は、東急田園都市線・鷺沼駅から車で10分ほどの住宅街の一画に位置している。

 開設は15年ほど前で、近隣のクリニックがオープンすることに併せてのものだが、「処方せん枚数は年間4万枚になりますが、このうち15%程度は面として持ち込まれています」と伊藤代表は語り、地域に根ざした薬局としてファンを獲得しつつ状況にある。

 薬局を構える宮前区有馬は比較的若年層の家族が多く、30~40歳を中心に高齢者まで幅広く住んでいるのが特徴だ。

 

 この若年層の家族が多いことを踏まえ、薬局にはさまざまな工夫が施されている。

 まず最初に目に入ってくるのは入口左側に構えるキッズルームだ。

キッズルームを設置することで子どもが嫌がらずに薬局にこられるようにしている
キッズルームを設置することで子どもが嫌がらずに薬局にこられるようにしている

 「ビルの構造上、出入口の左側に位置するので、お子さんは他の患者さんと接することなく遊ぶことができるので、待合スペースで騒いだり走ったりする心配がありません。また入口が1カ所のため外に出てしまう可能性も無いです」と述べ、安全面と快適性の双方で利用者にメリットがあるという。

 さらに専用スペースがあることで「お子さんが薬局に来ることを嫌がりません。これは子どもの視点からするとすごく重要で、病院に行くのが辛くても薬局で遊べることが治療へ前向きな気持ちにさせる一助になっていると思います」と解説する。

 当然のことながら全ての利用者が快適に情報提供を受けられるような配慮も随所に光る。開設当初から情報提供カウンターには衝立を設置するとともに、薬局内には有線放送をかけている。

投薬カウンターの衝立や有線放送でのマスキングなどプライバシー保護の取組みに注力
投薬カウンターの衝立や有線放送でのマスキングなどプライバシー保護の取組みに注力

 

 当然のことながら全ての利用者が快適に情報提供を受けられるような配慮も随所に光る。開設当初から情報提供カウンターには衝立を設置するとともに、薬局内には有線放送をかけている。

 「衝立を設けることで周辺には曖昧なかたちでしか情報は届きませんし、有線を流すことでさらにマスキングできます。患者さんを呼ぶ際も番号で呼び出す仕組みを採用し、極力個人が分からないような工夫を取り入れています」と強調し、伊藤代表自身がこれまで感じてきた経験を最大限に発揮している。

 

投薬時の“ひと声”も大切に

 

 細部へのこだわりは、薬局の構造に留まらない。

 処方せん薬の情報提供を行う際にも小さな変化に気がつくようなアプローチを取り入れた。「例えば、いつもと同じ薬で患者さんにも変化がない場合でも『順調ですね』といったひと声かけることをスタッフには求めています。人と人が向き合う場所において、無言のままで薬の受け渡しだけを行うようなことはしたくなかったですから」。

 

 その一方で、コミュニケーションの捕らえ方には二通りの考えがある。

 「基本的には必要な情報を適度な時間をかけて行います。必要以上に話し込むより、短くても積み重ねを続けるほうが、患者さんとの信頼関係を構築しやすいと考えています」。

 当然、コミュニケーションに重点を置く姿勢により、長時間話し込むような患者もいるが「あえて時間をずらして来局してもらうよう調節しています。昼頃であればそうした患者さんのニーズにも応えられるので」と続ける。

 

ネット販売解禁後にあえて店頭でOTC薬を取り扱うなど逆転の発想も
ネット販売解禁後にあえて店頭でOTC薬を取り扱うなど逆転の発想も

 取材を通じて印象的だったのはその柔軟性だ。

 象徴的とも言えるのが一般用医薬品をインターネット販売が解禁されてから、あえて店頭で扱いはじめたことだ。

 「想像よりも売上げはありますし、なにより相談が多い。これまで如何にOTC薬について生活者が疑問に思っていたのかを感じました」と指摘し、今後の充実にも力を注ぐ姿勢だ。

 薬局を取り巻く環境は将来的に見てもこれまでとは違う時代に突入することは明らか。

 厳しい時代を目前にして、同薬局のような幅広い視点で難局に備えたい。

 

薬局新聞 2014年2月5日付