【話題】日本における生薬生産

■日本漢方協会第33回学術大会

 一般発表「日本における生薬生産」より採録

 演者=株式会社ツムラ 笠原良二

 (2013年12月15日 東京)

 当社は国内やラオス自社農場での生薬栽培に取り組んでいるが、未だ8割を占める中国が今後も主たる生薬の調達先であることは変わらない。昨今、日中間で外交問題があるものの、十分な品質保持対策に基づく適正在庫確保や、現地生産者を中心とした協力会の組織化による相互理解を構築している。こうした中国の対策と並行し、引き続き国内栽培の強化も進めていく方針だ。

 

 昨年打ち出された医薬品産業ビジョンでも、漢方製剤を含む医療を支える基礎的な医薬品のメーカーに対して、作用機序への科学的エビデンス収集・発信の充実などに期待が寄せられる一方、高質な製品を安定供給できる企業体質の強化に言及し、医療上必要性が高い漢方薬を継続して安定供給を行うため、原料となる生薬の安定的な確保が必要で、国内栽培の推進などの対応が求められると指摘されている。

 

 こうしたことを背景に、ここ数年かなり国としてもバックアップしてくれる流れが出てきている。一昨年には自民党内部に「日本の誇れる漢方を推進する議員連盟」が設置され、また日本漢方生薬製剤協会の要望に応えて昨年からは厚労省医政局経済課・研究開発振興課、農水省生産局農産部地域作物課がコラボし、生薬農家と漢方薬メーカーをマッチングする薬用作物の産地化に向けた会議が始まった。現在までに全国8ブロックで実施されており、間もなく具体的なマッチングがなされる状況にある。

 

 これに関しては業界紙でも「薬用植物の国内栽培・国主導で本格始動」と大きく報道された。主要な栽培拠点としては本州の農家の耕地面積の10倍ほどの面積を持つ北海道の可能性が大きい。農水省補助金交付は拡大予定にあり、農機具の開発や農薬登録、土地の有効活用などに対策がなされる見通しだ。

 

 日本漢方生薬製剤協会のデータによると平成20年度は約2万トン、22年度では2.2万トンの医療用生薬が使われており、このうち当社が1万トン弱と全体の44%を担っている。国内生産拡大における課題には、農業就業人口の減少と高齢化、円高による競争力低下などコスト面、農薬の適正使用、種苗の確保、栽培指導があげられる。

 

 例えば農業就業人口をみてみると、1985年は500万人強居たのが2010年では260万人と半減しており、その平均年齢も59歳から65歳と、農家が少なくなり、また高齢化が進んでいることがわかる。円高によるコスト面についても、私が入社した1982年には1ドル240円ぐらいだったのが、一昨年は80円と30年間で3分の1になっている状況に表れている。

 

 現在、生薬栽培に使用できる農薬は少なく、作業時間が増したり、収穫量が減ったりしている。農薬登録には多大な費用がかかり、1農薬で300万円程度と歳月が必要だ。だいたい1つの生薬栽培に5種類ほど農薬が必要になるため、国や行政の支援をいただきながら使用できる農薬を増やす予定だ。

 

 当社では現在、北海道から熊本まで全国6カ所に主な栽培地を持っており、2010年には生薬の安全性および品質の保証体制をより強固なものにするため、安全かつ適正に生薬を生産するための基準として従来のトレーサビリティ体制構築や生産の標準化などの取り組みに管理規則や監査規則などを加えたGACP(生薬生産の管理に関する基準)を策定して取り組んでいる。

 

 原料生薬の栽培を通じては、漢方事業における価値だけではなく、地域や農家の活性化などを通じた社会的価値も創出する状況となっており、今後も拡大していきたいと考えている。

 

薬局新聞 2014年1月15日付