東京生薬協会会長/龍角散社長 藤井隆太氏インタビュー

 東京生薬協会の藤井隆太会長(龍角散代表取締役社長)は、セルフメディケーションの推進に果たす生薬製剤の役割は大きいと展望する。

 伝統的に使用されている生薬製剤などは、一時の不遇の時代を乗り越え、その穏やかな作用と確かな効き目に改めて脚光が集まっている。

 ご存知のとおり、龍角散の多角的な製品展開に代表されるように“古き良き薬を知らしめる”取組みは、生薬製剤の底力を発揮した好例として記憶にも新しいところだ。

 ここでは東京生薬協会としての展開とともに、これからの市場動向などについて大いに語っていただいた。

 

正しい理解で生薬製剤の更なる普及へ

東京生薬協会会長/龍角散社長 藤井隆太氏インタビュー

 

●知名度は高いものの使用法などの理解は不十分

 

――現状の生薬製剤市場について

 

 昔ながら地域で頑張っている薬局・薬店が減少傾向にあるので、新たな販売手法は当然考えなければならない。

 

 お店側として積極的に売りたい製品と、お客さんがピンポイントで欲しい物のギャップは往々にしてある。

 現在の広告規制の中ではメーカーも十分な訴求ができず、むしろサプリメントなどの方が効果があると誤解されていることも問題だ。

 これまでは地域の薬局・薬店で購入していたものの、薬局・薬店が無くなってしまい購入が困難になったという話は我々メーカー側にも入ってくる。

 

 ドラッグストア(DgS)でも取扱ってくれるところは結構あるが、一定期間に売れなくなってしまうと店頭から撤去されてしまうことも珍しくはない。

 

 ただ、生活者目線で見れば、自分の身体に合っている薬が店で売れていようと売れてなかろうが関係はない。

 家庭薬や生薬は製品によって処方が異なるので、似たような薬では対応できない場合もあり、このあたりは上手く供給しなくてはいけない問題だ。

 

 東邦薬品が展開しているe―健康ショップで占める家庭薬のシェアが大きいのは、実態として生薬製剤を求める潜在的需要を示唆しているものだと思う。

 

――潜在的な市場を活性化させるための方策

 

 生薬製剤は店頭でしっかりとした説明を行うと売上げが伸びる傾向にある。

 店頭展開に先立って薬剤師・登録販売者などを対象とした講習会を行うとその違いは明確な数字となって現れる。

 家庭薬や生薬製剤は、洋薬のOTC薬と違い単味成分で割り切れない処方設計となっている場合が多い。

 パッケージや添付文書だけでは製品・製剤としての良さが十分伝わらないこともありうる。

 

 例えば、龍角散は「ゴホンと言えば龍角散」のフレーズで知名度がある。

 しかし、この言葉から連想されるのは「風邪薬の一種」といったところかもしれないが、薬理作用としては生薬成分が喉の粘膜に付着し、喉の繊毛を活発にさせる効果があるもので、風邪薬として用いられると適正ではない使い方になる可能性がある。

 

 喉の薬であるが、強力な鎮咳効果を持つコデインのようなものではなく、喉の状態を良好に保つことを目的としている。

 予防的な使用も推薦できる製剤ということだ。

 また糖類などを使用していないので寝る前に一さじ服用し、喉が荒れるのを予防することができる。

 

 製品自体は昔から存在しており、知名度もある一方で、使用方法に関してはまだまだ生活者に知られていない部分は多い。

 それは専門家でも同じで名前は知っているが、「どんな成分が入っていて」、「どこに」、「どのように作用するのか」について、若い薬剤師はほとんど知らない。

 薬剤師は立ちっ放しで人とコミュニケーションを取ることも多く、龍角散の使用には適した状態だ。実際、使用してもらったら非常に好評価をいただいた。

 

 生薬製剤について若い薬剤師が知らないことは協会としても問題意識を抱いており、OTC医薬品について都薬と取組んでいくことを協議している。

 毎年新宿で開催しているOTC薬イベントにおいて、啓発を目的としたアピールを展開していきたい。

 薬剤師自身も医療用だけでなく、OTC薬の説明に関しても知識を高めていくことを計画している。

 消費者の薬に対するイメージとして「あまりに強い薬は避けたい」という方には、穏やかに作用する家庭薬の効き方は支持されると思う。もちろん薬剤師も必要最低限の薬で最大限の成果をもたらすのが専門家としての役割だ。

 

 

●原産国問題と生薬の方向性

 

――生薬を取り囲む話題としては原料問題がある

 

 中国における価格問題や燃料費も看過できない課題として横たわっているのは周知のとおりだ。

 ただこの原薬を栽培する話は非常に時間が掛かる。

 薬木などは十数年かかるが、誰かが始めないといけないことだと思っている。

 

 まずは龍角散として生薬の栽培に着手し、可能な部分から製品に反映させていきたいと思っている。

 コストは短期的に見れば上昇すると見ているが、長期的に中国のリスクと照らし合わせたとき、燃料費・原材料費・大気汚染の検査費などコストは今後も大きくなる可能性は否定できない状況にある。

 こうしたことを考えると、国内栽培のほうがトレーサビリティも確保できる安心・安全感で相殺できると見ている。

 

 日本の生薬製剤は中国でも人気がある。当社製品はもちろんだが、家庭薬の中にも向こうで相当ニーズがあるものも少なくない。 

 

 

――改めて、生薬製剤の展望について

 

 昔からある生薬製剤・伝統薬などが今の時代に即していないのかと問われれば、決してそんなことはないし、アプローチを正しく行えばベストマッチする。

 生薬製剤が発生した地域には、症状に悩む患者が多くいたからこそ成り立っていた訳であり、現代においても地域特有の悩みは存在している。

 先人たちが築いた薬には底力がまだまだあると実感している。

 

 現在残っている家庭薬・生薬製剤には古くからの顧客や独自のノウハウを有していることが多い。

 技術的にも薬理学的にも素晴らしい設計が施されているものも豊富だ。このあたりは生薬協会としてバックアップしていきたい。

 

 

薬局新聞 2013年12月4日付