お薬手帳の電子化、取組み着々と

 お薬手帳の電子化が、いよいよ本格的な実現へ向けたカウントダウンに入ったと言えそうだ。

 2010年の内閣IT戦略本部において「どこでもMY病院」構想が掲げられ、日本の医療環境を巡る将来図として、具体的な検討が行なわれたことは記憶に新しい。そのけん引役として期待されているのが「電子版お薬手帳」だ。

 奇しくも東日本大震災の際、被災を受けた病院・薬局で保存されている患者情報が全消失するという非常事態に遭遇したことにより、情報の電子保存が改めて注目されることとなった。これまでの動きなどについて紹介する。

 

災害での患者情報消失防止に向け電子保存に脚光

 

 2010年に総務省・厚生労働省・経済産業省・内閣府が横断的に着手して乗り出した「どこでもMY病院構想」では、セキュリティが担保されたネットワーク上において個人と医療機関等を接続し、情報を登録した個人と医療・保健従事者がシステムに保存された医療情報等を閲覧できるようになることをイメージしている。

 

 ただ医療機関における電子カルテの導入率は病院規模による違いが大きく(平均約20%)、電子化に対する目標が掲げられて10年以上が経過しても、依然として遅々とした状況にある。厚労省は今年3月に開催した「医療情報ネットワーク基盤検討会」において処方せんの電子化に関連する法改正を2~3年後を目途に実施することを掲げているものの、課題が山積しているのが現状だ。

 

 その一方、薬局における電子薬歴の普及率は全体の4割を超えており、医療機関の電子カルテ普及率と比較すれば、情報のIT化に積極的と見ることができる。

 

 既に実証実験も全国各地・企業単位でさまざまなかたちで行われている。神奈川県川崎市の宮前区ではソニーの協力のもと、ICカードをかざして情報にアクセスする電子お薬手帳を稼働させており、保存形式もクラウド方式を採用しているため自然災害等によるデータの消失リスクが極めて少ない。

 

 また大阪府薬剤師会も電子お薬手帳を稼働させ、実証実験の結果を日薬学術大会で発表する予定にある。

 アインファーマシーズも、2011年からQRコードを撮影する方式とスマートフォンをかざす形式の電子お薬手帳のトライアル事業を展開し、日本調剤なども同様に続いている。

 

 その反面、現場ごとに多様なフォーマットで電子お薬手帳が開発されることで利便性の低下を招く可能性が指摘されたり、同時に患者の囲い込みが行われたりすることを踏まえて厚労省は、保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)が策定したデータフォーマットを用いることを呼びかけている。

 

 稼働している薬局においても、一長一短が浮かび上がる。震災などへの対応を踏まえると一定地域内の薬局で利用できることが重要と考えられ、クラウド型の情報管理が有用と見られているが、個人情報と医療データの切り離しと管理方法が課題となっている。

 

 またQRコードは患者が毎回カメラでバーコードを撮影する必要があるものの、個人の携帯内にデータが保存されるため、紛失などを除いてセキュリティリスクは低い。しかしQRコードを印字するという手間が発生するなど、一本化に際しては乗り越えなければならないハードルが少なくないのが実態と言えそうだ。

 

薬局新聞 2013年9月11日付