「現行制度に安住する薬剤師に将来なし」

「薬剤師の将来ビジョン」表紙
「薬剤師の将来ビジョン」表紙

 日本薬剤師会はこれからの薬剤師の活動指標となる『薬剤師の将来ビジョン(暫定版)』をとりまとめ、これを公表した。同書は薬局・病院・製薬企業など、薬剤師が勤務するさまざまな業態ごとにまとめられており、原則的に全項目で「超高齢社会の到来」と「医療財政の逼迫」がキーワードとして捉えられている。また、専門薬剤師や高度管理薬剤師などの認定制度の必要性もあげており、職能の高度化も視野に入れた内容となっている。ただ、日薬はあくまでも「今後の方向性を決めるための材料であり、この考えを押し付けるものではない。時代の状況を見て適時見直す」(児玉孝会長)として、暫定版との位置づけを強調しており、発案当初に掲げられた“座標軸的内容”からは、若干トーンダウンした印象のものとなった。

 

●2025年の薬局のあるべき姿を記載

 

 「薬剤師の将来ビジョン」は、児玉会長が会長就任時に掲げた薬剤師のこれからのロードマップを具現化した内容で、当初の予定から大幅に遅延しての完成となった。ビジョンにはまず、全体のベースとなる2025年を一里塚とした薬剤師の絵姿が明示されている。それによると、地域包括ケアシステムの確立と薬薬連携の遂行など、外来から入院、退院、在宅までの全ての段階における薬剤の管理は薬剤師が実施していると想定。また薬局の状態に関しても、現在のような調剤に偏った経営状態ではなく、「公共的な役割が進展する」と展望し、具体的には調剤・一般用医薬品・薬局製剤の販売等を「全ての薬局が実施」しており、さらに「薬局には一目で薬局とわかる看板が設置され、山間へき地など全ての地域に薬局を通じた医薬品の供給がなされる体制が整備されている」などの社会インフラの確立を条件としている。

 同項目の特徴的とも言える文言では、薬局の開設者について「薬剤師が開設責任を担う制度の導入」を掲げており、ひとりの代表者による複数軒の薬局を所持する「いわゆるチェーン企業薬局」をけん制しているとも捉えられる記述を明示した。これらに加えて疾病の予防やセルフメディケーションの推進、薬剤師の新業務等には、「血糖値測定等の簡易検査の実施」も可能になっているとも掲げている。

 2025年以降を視野に入れた記載では「リフィル処方せんの制度化」や「在宅患者における褥瘡治療薬の貼付・交換」といった法制度改正も視野に入れた薬剤師の業務範囲拡大が指摘された。

 

●認定・専門薬剤師の重要性を強調

 

 一方、薬剤師の職域ごとのビジョンとして「薬局」、「病院・診療所」、「製薬」、「卸」、「学校」、「大学」、「行政」の7項目が掲げられており、超高齢社会を迎える2025年時点での各職場でのあるべき姿が明示されている。

 「薬局」では、「生涯学習の徹底」や「認定薬剤師」及び「専門薬剤師」を輩出する重要性を言及。薬学教育6年制履修者が全体の半数近くになることを視野に入れている反面、現状の薬局が「処方せんを持っていなくては入りにくい」との印象を生活者に与えてしまっていることは大きな反省点として捉えている。

 病院・診療所薬剤師の将来に関しては、平成22年4月の「チーム医療の推進に係る局長通知」を踏まえて総合的な医薬品の管理者であると解説。「国民の期待にようやく追いついた状態であり、そもそも正確な調剤だけに国民は期待しているものではない」ことから、調剤に至るプロセスから調剤後の安心・安全、医薬品を含む薬事全般の安全管理責任者であるべきと主張している。

 製薬企業勤務薬剤師に関しては、平成17年の改正薬事法により統括製造販売責任者として薬剤師の設置が要件となったことと、6年制薬剤師の誕生がターニングポイントであると分析。医薬品全般のリスクマネージメントを総合的に考えて判断することに期待するものとしている。その一方で、グローバルレベルの医薬品の管理などの知識・スキルについては、教育制度などが遅れていることを問題視し、欧州で実施されている「Qualified Person」のような認定制度と法整備が必要であるとまとめている。卸勤務薬剤師に関しては具体的な将来像は示されておらず、品質管理と副作用の防止といった現状をブラッシュアップしていく内容に留めており、今後に不安を感じさせる記載となった。

 

●学校薬剤師に対する期待感も大きく

 

 中学3年生における「くすり教育」が義務化されたことを受け、学校薬剤師には高い期待感を感じさせる記述が目立った。学校内の環境衛生や保健活動への参加に加え、「くすり教育は世界に類を見ない学校薬剤師の制度がいかに有益であるかを社会に示さなくてはならない」と強調し、標準的学校薬剤師のモデルの確立などをあげた。教育にある程度対応した実務実習も必要との考えを披露している。

 全体のまとめとして「現行制度の中に安住する薬剤師のままでは将来はないのではないか」と薬剤師を取り巻く漫然とした不安を“代弁”しており、その代表例として分業を指摘。「数字的目標を達成することが目的ではなく、あくまでもツール」として、調剤に偏重してきた直近20年間を反省している。そのうえで「来るべき超高齢社会に対してはこの10年間で体制づくりを進めなけれならない」と主張し、薬剤師の本領である医薬品の効果を最大限に引き出すことや地域完結型医療へチームの一員として参加することが重要であるとまとめている。

 

『薬局新聞』2012年7月4日